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【EQ仲間に聴きに行こう】第三弾:椎野磨美さん

皆様にご好評頂いている【EQ仲間に聴きに行こう!】インタビュー第三弾は企業の組織開発・人材育成・研修業務に関わり四半世紀のEQエキスパート椎野磨美さんです。株式会社アイズプラス代表の池照がお話を伺いました。

椎野さんは現在人材開発コンサルティング、研修プログラムの設計、研修コンテンツの開発、研修講師を担当。研修やセミナーの受講者数は数万人にのぼり、EQトレーナーとして「人の得意を見つけ、才能を開花させること」を得意とします。企業研修や個人コーチングを行う傍ら、プロボノ活動として全国各地でワークショップやセミナーを開催しています。

EQを学ぼうと思ったきっかけ

椎野(敬称略):20代の頃、「感情に振り回されている自分を何とかしたい」と模索する中で出会ったのがEQでした。その頃はEQの書籍を読んだり、自分なりに試行錯誤しながら感情を整理する方法を考えたりしていました。30代になり、社内外からメンターリクエストを受けることが多くなり、ご相談者の感情を整理させて頂く機会が増えました。メンター活動をして行く中で、相談者が自分の言葉で楽になっていくことが分かり、それまで感情に振り回されていた方々がまさに生まれ変わったように、生き方や仕事のやり方がスムーズに変わっていく姿を見て、より深くEQを学びたいと思うようになりました。

池照:今まで椎野さんのように短期間でEQの資格を取得し、発信して来た人はそう多くは居ません。転機となったものは何ですか?

椎野:感情マネジメントを自分で出来るようになり、また、メンター活動を通して思っていたことがEQの変化を数値化できるといいなぁということでした。EQI(アドバンテッジリスクマネジメント社におけるEQ検査ツール)と言うツールがあることで相談者の皆さんの変化が速まりました。みなさんの中でもEQIで数値として可視化できるようになったことで、「あ!やっぱり!」と思うこと、「自分でも気づいていなかった!」と思うこと等があり、自分が答えたものが客観的に見えるようになったことで納得度が高まり、相手が楽になるスピードが加速しました。
色々なカウンセリングやメンタリングを受けに行ったけれどしっくりこなかった方が自分の元に来られてEQIを受け、結果を見ながらプロファイリングして行くと憑き物が落ちて行くような感覚になって頂けたことがありました。一緒に考えたアクションプランに従って行動し始めたら2週間くらいで周りが変わってきたと言われたのです。その方は聴覚過敏な傾向があったので、アクションプランの1つとして耳栓をして「何かあったら声をかけてください」と書いた紙を置くと言うことでした。周りが変わってきたと感じた頃、試しに耳栓を取って見ようと思ってやってみると周りが気にならなくなったそうです。こんな風に、その方にあったアクションプランやツールを一緒に考えることで実際の行動変容に繋がって皆さんが楽になる。そう言う体感が一番大きかったと思います。

池照:椎野さん自身が体感したことはありますか。

椎野:EQの理論を学んだことで自分の入り混じった感情をメタ認知することができ、自分自身がより楽になってきたと感じました。「今日ちょっと調子悪いな」→「午前中は会議をリスケしてもらおう」とか、自分の感情をより上手くマネジメント出来るようになっていく体感が確証を持って得られるので、それがEQにのめりこんでいった理由だと思います。

池照:感情は本当にストレートな一種類のものではなく、入り混じったもので、これを言語化するツールに出会えたこと、そして自分の中の感情を認めて、分かりやすい形で相手に伝えられるようになったり、より自分や相手に寄り添えるようになったりしたことが私がEQに出会えて良かったなと思うところです。
EQに出会う前は、椎野さんは相談者のカウンセリングやメンタリングをする際に使っていたツールはありますか。

椎野:ありません。あくまで自分の経験値に基づいたものを伝えていました。自分がやってきた方法を他の人にやって貰ってもぴったりはまるかどうかは分からないので、20個の選択肢を差し出して、その中から自分自身に合うものを選んで見つけてもらうという感じで提供していました。ところが、EQIを行うことでプロファイリングする際に5個くらいに絞ってあげられて、この人だったらこのアクションプランが出来そうとなるので良い意味で皆さんの選択肢を絞ってあげられるようになり、効果が早くでるようになりました。

池照:そのアクションプランがピタッとくるのはその人自身のデータから読んだことだからですよね!

EQを学び、仕事に活かす中での気づきや課題

池照:EQの優先順位を上げて導入したり、周囲に広めたりすることでは第一人者とも言える椎野さん。どうやって皆さんにEQを理解してもらい広めていらっしゃいますか?

椎野:日本においては、EQがアカデミックに研究されている分野であり、能力として磨くことが出来ることを知らない方が多く、知っていたとしても懐疑的であるケースが多く見られます。
ある企業では、他の役員の方に先駆けて社長がEQの価値を認めてくれました。とはいえ、組織なのでいきなり全社導入というのは正直難しく、成果が出やすそうな部門を探して、ビフォーアフターを見せることにしました。具体的には、ある事業所が抱えていた「離職率を下げたい」という問題に対して、一人一人のEQI検査をしないまでも研修にEQのエッセンスを入れれば変わるだろうという確信があったので1週間の研修をやらせて貰いました。2か月後には、離職率がゼロになりました。その後も一年近くゼロをキープし、更に売り上げも伸ばすことが出来ました。これを皮切りに社内研修で取り入れるようになり、EQの理論を知った社員が実際にEQIを受けるようになりました。会社としては、昨年アンガーマネジメント研修を新入社員研修に導入しました。アンガーマネジメントは言葉が分かりやすくメディアにも多く出ているので取り入れやすかったのですが、EQは悲しいけれど、まだ言葉が浸透しておらず受け入れられづらい点があります。アンガーマネジメントもEQの中の一部分なので、一緒に話すようにしていたら、「一番良かった研修は?」というアンケートで、EQやアンガーマネジメントが言葉として上がってくるようになりました。そこで今年は初めてEQを新入社員200人の研修に導入することができました。

池照:椎野さんのお力でEQを研修などにも取り入れてきたその企業では組織風土も変わってきているのでは?

椎野:はい、変わってきています。ありがたいことにマネージャー層がその変化に気づき始めているので、ヒューマンスキルを鍛えるためにEQを取り入れたい言う声が現場からも上がってきています。

EQを通して、今後やっていきたいこと

椎野:もっと多くの人たちにEQを磨くことで「楽しく、楽に生きられる」ということを知って貰いたいと思っています。
IT系のメディアでブログを書いているのですが、そこに書いたものがメディアの目に触れ夕方のニュースにコメントを寄せる機会がありました。メディアに出ると反響も大きく、今後も、EQを知ってもらう上でブログやメディアを通してEQの露出度が上がって行けばいいなぁと思っています。また、アンガーマネジメントを小学校などに取り入れ始めているところがありますが、感情はそれだけではないので小さいうちから「悲しいことを悲しいと言える」「怒っていることを怒っていると伝えられる」社会を築いていきたいです。自分の感情を言えるようになったくらいのお子さんや子育て中のお母さんにEQを知って貰いたいという野望があります。

池照:椎野さんからEQで世界にポジティブチェンジを起こしたい人たちへのメッセージはありますか?
椎野:まずは、学びに行ってください!EQを体験してください!EQに触れることで自分のことって自分では分かっていないことに気づけます。まずは行動する。まずは行ってみる。この一歩を踏み出すことが大事だと思っています。

【池照のあとがき】
“EQを磨くことで「楽しく、楽に生きられる」ということを知って貰いたい”、と笑顔で話す椎野さんがとても印象的でした。エンジニア、理系バックグランドの方々が多い職場で、同じバックグランドを持ちながら男女問わず多くの人のニーズを的確につかみ、気持ちに寄り添うメンタリングを実施する存在は貴重です。そして何より、彼女自身がEQを知ったことで「楽しく、楽に生きる」を体感したからこそ伝えられる現場視点のメンタリングには相談が絶えないこともよく分かります。もっと多くの仕事現場に「感情マネジメント」が取り入れられたなら、どんなに多くの方が「楽しく、楽に生きる」を体感できることか!と本当にわくわくします。

教育の分野にもEQを広げたいと語ってくださった椎野さんの次の挑戦がとても楽しみです。まずは学ぶ、体験する、触れる!そんな挑戦のしかけを椎野さんとご一緒できたらと思うと、EQの可能性がもっと広がっていきます。椎野さん、貴重なお時間をありがとうございました。

 

椎野 磨美
ブログ:https://blogs.itmedia.co.jp/shinomami
資格:
EQGA 公認プロファイラー
EQGA 公認トレーナー
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 公認アンガーマネジメントファシリテータ