2020年4月、大学院を修了し社会人になった息子との会話から過去を振り返ってみました。
小学生時代メンタル不調だった息子が何故こんなに逞しくなったのか…嬉しい振り返りの時間となりました。
気づきからの新しいスタート
1994年7月に誕生した息子。保育園時代までは先生やお友達に恵まれて、大変楽しく充実した時間を過ごしてきました。両家に唯一の孫だった息子は親族からの愛情も一身に受けて育ちました。保育園とは違う地域にあった地元の小学校に入学し3年が経過した頃、「学校が楽しくない…」と話すようになりました。はじめは何が原因か分からない状況が続きました。
例えば「死ね」や「あっちいけ」などの気になる言葉を言われた時は「トイレに行って気持ちを流しちゃうのは?」などと明るくアドバイスをしていました。しかし、少しずつ見えてきたのはお友達からの暴力的な言葉もありましたが、”依存心”なのかもしれないという事でした。
幼少の頃から周りに沢山の人が居て、皆が話しかけてくれて、皆が話をよく聴いてくれました。自主的に話すペースやタイミングのズレ、また他者から話し掛けて欲しい思いが上手に伝えられず、人とのやりとりに対して悩んでしまったのだと感じました。この後、私と息子が向き合う時間の中で失敗もあれば成功もありました。やりとりの中で、息子に対する私の関わり合いも何か影響しているのではないか?と感じたことが、心理学の学びをスタートするきっかけになりました。
双方向のコミュニケーションから生まれた変化
まず初めに交流分析についての資格を取得し、私の過干渉メッセージに気が付きました。当時、秘書をしていた私の仕事には役立っていた素質ですが、過剰になり過ぎると依存心が生まれる場合があると思いました。
「食べる?食べない?」「上着は?」「持っていく?持っていかない?」本来は息子が考えて決められる事まで先回りしてメッセージを送っていたことに気が付いたのです。但し、これは受け取り手にもよるので全ての人には当てはまらない可能性もあります。息子の場合は依存心が高まり、自分から沸き起こるポジティブ感情がなかなか生まれませんでした。小学校4年生から6年生までは、なかなか大変な時を過ごしました。
1回目の転機は、勉強が好きであった事と信頼できる学習塾の先生との出逢いから挑戦した中学受験でした。塾の先生の自宅に通い勉強する日も多くありました。この先生との出逢いは彼の大きな自信に繋がり、希望の私立中学に合格しました。
その後英語に目覚め、夏休みを利用した短期留学の経験をきっかけに、高校での海外活動、大学入学のプレゼンテーション、海外長期留学、そして今回就職活動の意思決定へと繋がっていきました。さて、どのタイミングで息子は前に進む感情や自ら「やりたい」という意思決定、行動に変化していったのでしょうか。はっきりとした時期は分かりませんが、社会人になった息子からのメッセージで気づいたことがあります。
とにかく話を良く聴いてくれた。強制はせず、「やれるところまではやってみよう」と言ってくれた。そしていつも味方だった。と言うメッセージでした。交流分析から私自身の自己理解が深まり関わり合いを変え、次にカウンセラーの資格を取得し傾聴を心掛けました。
振り返ると息子の言った強制的ではない、客観的な傾聴が彼にとって安心安全な感情に繋がっていたのかもしれません。中学に入学して息子自身の自己理解が深まっていると感じる発言が増えました。更にコーチングの資格を取った後には息子への「今日良かった事と次に同じ事をするとしたら、何か変えることはある?」と言う質問を増やして行きました。本人が意思決定し達成したら一緒に喜びました。高校受験の時は息子が諦めそうになった時、「やれるところまでやり抜いて、それでも難しい時に新しい道を考えよう」と伝えていました。勉強は強制しませんでしたが、夜10時までは集中して勉強していた事は本人が決めた事でした。合格発表の日には、パソコンの前で大の字になって声をあげて喜び合いました。その道のりでアドラー心理学を学び「課題の分離」に辿り着いたことも私自身に大きな影響を与えました。過干渉だった私は、息子が考えて決めるべき事を先回りして「私の課題」にしてしまっていたんです。そこで途中、方法を変えてみました。息子への情報提供は怠らず、選択や意思決定は息子に任せるようにして行ったのです。一番大きかった事は悩んで悩んで葛藤した時期も、なんでも一緒に心の底から喜べたことでしょうか。
課題というプレゼント
ここまで息子の成長と共に交流分析、心理学、EQと学んできたことで、大変だけれども越えてみたい!その先を想像しながらワクワクする感情はより良い選択をする意思決定や行動に繋がっている!という事を理論から理解できる機会となりました。そのより良い感情や思考はコミュニケーションによる「納得感」から生まれてくるのだと思います。
自分自身の感情や思考の癖が他者とのやり取りにどのような影響を及ぼし、どのように自分自身にも返ってくるのか。息子を通して学ぶきっかけとなり、更には理解し活用出来ている事は神様からの課題だったと感じています
コラムニスト 田寺尚子
株式会社ヒューマン・ブレンディ