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EQ『自己パターンの認識』ー違う自分を探しにー

行動パターンの背景にある感情

今回は、米国Six Seconds EQコンピテンシーの1つ『自己パターンの認識』についてお話しします。
『自己パターン』とは、習慣的に繰り返す反応や行動のことをいいます。
それが必ずしも悪いわけではありませんが、その背景にある、瞬間的に沸き起こる感情を制御できず、無意識に繰り返してしまうことで、時に自己嫌悪に陥ったり、人間関係を悪化させたりすることがあります。

私の場合、「本日限り」「〇〇限定」と書かれた貼り紙を見ると、つい2度見してしまいます。
「もちもちした食感」など、イメージを掻き立てるような言葉にワクワクします。
「〇円引き」よりも「〇〇増量」と書かれた方に魅力を感じます。
そして、それらの言葉を見ると“衝動買い”をして、後悔することがあります。

会議の場で、急に言葉遣いが丁寧になることがあります。
以前、同席していた同僚に「さっきはかなり怒っていましたね」と言われ驚きました。
「えっ、なんで?」と尋ねると、「宮竹さんは怒ると言葉遣いが丁寧になるから」と言われ、私の感情が言葉遣いに表れていたことを知りました。
もしかしたら、私のイライラした感情を察知し、会議から早く逃れたいと思っている人がいたかもしれません。

時間に追われてパソコンに向かっていると、眉間にシワが寄っていることもあります。
そんな時に誰かに話しかけられようものなら、顔も上げずに「何?」と聞き返すことさえありました。
そんな表情や反応が、声をかけづらい雰囲気を作っていた可能性もあります。

感情のマネジメントで意識を変える

このように「自己パターン」が好ましくない形で表れる場合、背景にある感情をマネジメントする必要があります。

「本日限り」という告知を見て、身体がそちらの方に向かいそうになった時には一旦立ち止まり「私は本当にこの商品に関心があるのか?」「店員に強く進められても断ることができるか?」などと自分に問いかけてみると、意外にアッサリと「や~めた」となるものです。

会議中、急に丁寧な言葉遣いになったら「冷静な判断はできないぞ」という注意信号が点滅しているのですから、感情をクールダウンさせます。
「少し休憩を入れましょうか」と提案したり、「この件は一旦持ち帰らせてほしい」と申し出たりします。

感情が表情に出やすければ、鏡を見る回数を増やすことも一つでしょう。
会社の机の上、台所の流しの近くなど、顔をフッと上げた時、表情を確認できる場所に置くのです。
コールセンターや接客業では、負の感情を引きずらないように、次の対応に臨む前に鏡を見るよう心掛けている人もいます。

瞬間的な感情をマネジメントできれば、次に「この感情をどうすればいいだろうか」という「思考」が働き、状況に合った適切な行動につなげることができます。

このように「自己パターン」が好ましくない形で表れる場合、背景にある感情をマネジメントする必要があります。

感情と思考が新たな環境を作る

さて、その「思考」ですが、漢字が意味するのは『頭や心で活動し、知恵を巡らせること』と示されています。
そう言われてみると、私たちは日々の生活の中で、どれだけ知恵を巡らせているでしょうか。

子供の頃、父がこんなことを言っていました。
「日本には四季がある。だから、暑さ寒さを過ごすために衣食住の工夫をする。頭を使っているから賢くなれるんだ」
父は「モノづくり日本」が自慢でしたが、戦後の日本を復興させてきた人たちには、何もないところから新しい日本を築き上げてきたという自負があったのだと思います。
戦後の辛さと希望、季節の移り変わりへの不安と喜び。不自由な生活の中にも光を見出し、一人一人の「なんとかしたい」という思いが思考を働かせ、知恵が生まれてきたのではないかと思います。

そして今日、当時では想像できないほどの快適な生活が送れるようになりました。
エアコンのある部屋、長期保存できる食品、着心地のいい服…。
不便な生活は誰かが考えて解消してくれます。
そういった居心地のいい生活に浸かっている私たちの思考力は、少しずつ衰退してきているのではないかと思えてなりません。

感情と思考が一体になって『自己パターン』が変わるのですから、肝心な思考力が機能しなければ、習慣的に繰り返す反応や行動は変わりようがありません。

では、思考を衰退させないためはどうすればいいでしょうか。
私がお勧めするのは、まず、普段気に留めていない「当たり前」のことに目を向けてみることです。
「なぜこうなっているのかな?」「もっといい方法はないのだろうか?」と、疑問や関心を持って物事を捉えるようになると、いろいろと知りたくなってきます。
それをくり返すだけでも思考力が鍛えられ、視界が広がります。

習慣的に繰り返している反応や行動を思い起こし、好ましくないパターンであれば、その背景にある感情をマネジメントし、思考を働かせる。

きっと、今までとは違う行動をとっている自分に気づくでしょう。

株式会社感性労働研究所
宮竹直子