EQとIQ

「もう少し考えてからモノを言いなさい」


子どもの頃、よく母から言われていました。子供のころの私はまったく悪気なく思ったことをあまり考えずに発し、大人の機嫌を損ねることが多かったようです。

「考えてからモノを言う」、難しいと感じながらも、私はそれができるような大人に少しずつなっていった気がします。誰かを怒らせることがないように、そして誰かが気分を害さないようといつも周囲の顔色をうかがいながら言葉を選び、表情を選ぶ訓練をしてきたのかもしれません。それでも時々自分の感情を爆発させてしまい、自分にとっては思ってもみなかった残念な結果を迎ええてしまうことも多々ありました。それは「考えてモノを言わなかった」からだと理解し、考えられない自分にイライラしっぱなしでした。

「それについてどう感じた?」


それでも会社に入って立派に社会人となり、しばらくたった頃に上司に聞かれたのがこの質問でした。論理的な考え方で論理的な説明が求められる外資系の企業で、仕事がうまく進まなかった理由を論理的に説明しようとした矢先、アメリカ人の上司にから発せられたこの言葉は、私にとって驚きの質問でした。「私が何を感じたかは関係あるの?」、仕事場で初めて聞かれた私の気持ちについての質問に、私は違和感を感じたのです。

この質問こそが、私が後にEQを学んでみたいと思ったきっかけの一つとなりました。自分の気持ちに少しずつ着目できるようになると、不思議ですがあまり自分にイライラすることがなくなってきたのです。プラスでもマイナスでも、いったん感情を気にすることで心が落ち着いてくることが分かってきたからです。

 

IQは成果を出すために情報を収集して分析、整理して課題解決をする力、一方、EQは感情をベースに思考をブレンドして成果に向けた言動を導きだす力です。この両方がそろって活用されることで、人は自分自身を大切にしながら思い描くコミュニケーションがとれるようになります。


私たちは、「え、それって違うんじゃない?」「この体制だと失敗するな〜、そんな違和感(EQ)があるからこそ、「どうしたいのか?」(IQ)を考えます。せっかく作った新しい制度についての説明に社員が不安そうにしているのを感じ(EQ)、予定を変えて質疑応答の時間をとること(IQ)を選択し、納得や理解につなげることができます。もし、この時に周囲の顔色や気持ちに気づかず(もしくは気づかないふりをして)説明会を終わらせることばかりを気にして話を進めていたら、社員の不安を払拭することはできず制度導入は成功しないでしょう。また、自分の気持ちや違和感といった「感じる」を無視して「とにかく伝えなきゃいけないことだけを優先していては、周囲の人の不安げ様子だけを感じながらも無視している自分が好きになれずにイライラしてしまうものです。アメリカ人の上司は、私のイライラを感じとっていたでしょう。そしてそれが、私自身が自分の気持ちを置き去りして何とかうまく言い訳をしようと思考ばかりを働かせていることに気づいていたのかもしれません。


私たちは常に、何かを感じて生きているものです。
そしてその中には想定外の感情をもつことも多くあります。

感じ悪いな〜、嬉しいな〜、あれ、ちょっと違う??? 私達は、この違和感や感情があるからこそ、思考を適切に働かせられるのです。もしあなたが「考えてモノを言う」状態を作りたいなら、まずはご自身の気持ちをいったん受け止めて大切にすることから着目してみましょう。IQ「考える」という情報処理によって課題解決を働かせる前に、EQ「感じる」の適格な情報を得ることはとても重要なのです。


想定内の気持ちも、想定外の違和感も、ちょっと意識することで着目できるようになります。「どんな風に感じてる?」自分が、そして大切な人がもし、気持ちを置き去りにしそうな時は聴いてみてあげましょう。
EQIQ、どちらも大切な私たちの機能ですから。


2018/08
アイズプラス
池照佳代