私事ですが、地元山梨に端を発する【小笠原流礼法】を数年来勉強しています。
【小笠原流礼法】は室町時代に将軍・足利義満に仕えた小笠原長秀氏によって完成された武家の礼法が元となっています。その根底には「相手を大切に思うこころ」が存在しています。
EQに出会う以前から【小笠原流礼法】を学んでいましたが、学べば学ぶほど非常にEQ理論に近い、重なるものがあるなぁと感じます。
EQI行動特性検査の中に「情緒的感受性」、「状況モニタリング」という素養があります。「情緒的感受性」は相手の気持ちを敏感に察知し理解していく事、「状況モニタリング」は状況を客観的に観察し判断し、自分の行動の手掛かりにする事、です。
私はこの2つの素養を簡単に説明する際に「相手の気持ちまで考えて場の空気を読むこと」とお伝えしています。同じような場面でも相手が違えば対応は変わってきますし、同じ相手でも場の状況に応じて自分の取る行動は変えていく必要があります。
小笠原流礼法でも基本的な型は存在しますが、「その場の状況に応じて自分の立ち振る舞いは変えていくこと」という意味の教えてが存在します。武家礼法と聞くと堅苦しい形ばかりが決まっている礼儀作法と捉える方も多いかもしれませんが、大切なのは“形”ではなく“相手を大切に思うこころ”という教えなのだと私は理解しています。
かつて食品メーカーで管理職をしていた頃の話です。
私が外出中に部下から携帯電話に連絡がはいりました。私は丁度大学のキャリアセンターの方と打ち合わせをしていたので電話を取ることは出来ませんでしたが緊急な案件かと思い打ち合わせ中もアレコレ考えてしまいました。打ち合わせ後にすぐに折り返しましたが用件は緊急なものではなく、私が帰社してからでも問題ないものでした。
その部下が緊急性の判断が出来なかったのであれば仕方ないと思い、その後に繋がる指導をしますが、その部下は緊急性がないことも分かっているものの、今自分が確認したい(忘れないためにも)思いが勝ってしまい電話を掛けたのです。私は「相手への思いやりを持った仕事をしていきましょう」と伝え、とっさに行動する前に一度立ち止まって相手のことを考えるクセ付けを徹底するようにその部下はもちろん、他のメンバーそして自分も含めて行動化するように気を付けました。
EQ理論は1990年代のアメリカで確立された理論、小笠原流礼法は日本の室町時代から脈々と現代まで受け継がれている作法、一見すると全く別のことのようですが、真理は世界共通、また時代を超えても共有できるものなのだと実感しています。
樋口しのぶ