多くの研究が人々が広い範囲で疎外感を感じており、その主な要因は自然とのつながりの欠如ではないかと言われています。自然とのつながりを少しでも多く増やすことで、個人や社会全体に及ぼす驚くべき利点があることが分かっています。
人間は好ましくない環境で生活している?
”生物は好ましくない場所で生活をしていると社会的、心理的、身体的に壊れてしまう”ーこれはE.R.ウィルソンの言葉です。
1950年代、動物園の動物は研究者を悩ませました。それは食料も住環境も整っているし、安全も確保できているにも関わらず、繁殖に失敗することが多く、野生の同じ動物に比べて驚くほど死亡率が高かったからです。ここから生物学者たちは生息地選択理論と呼ばれるものを発見しました。これは基本的に、生物は進化してきた生息地で生存し、繁栄するように体が出来ていることを意味しています。
これは人間にもあてはまるのです。私たちは昨今、住環境がガラリとかわってきており、疑問の余地なく社会的、心理的、そして身体的に壊れてしまっています。人間は何百万年もの間自然界に住み、進化し続け、日々緑の森、青い湖、川に生まれて生きてきました。現在、大多数の人がコンクリートジャングルに住んでいて、一日中スクリーンを見つめています。
私たちが経験している心理的、社会的苦痛は前例のないレベルに達しており、人間が好ましくない住環境で生活している結果であると言えるだろう、と30年以上にわたり、人間に及ぼす自然の影響を研究してきたイリノイ大学の研究者Ming Kuoは言います。
Kuoの研究によると”公園と緑が私たちの生活を明るくするだけでなく実際に機能する”ことが分かっています。
ほぼ同一の2つの住環境比較が示した自然の効果
あるシカゴにある16の10階建てビルがありました。ここはもともとは緑で囲まれた設計になっていましたが、経年劣化の影響で最終的に舗装されてしまいました。
Kuoのチームが研究のため、いくつかの建物で緑を復元することにしたのです。居住者にどんな影響を及ぼしたと思いますか?
緑化しなかった建物では社会的崩壊が見つかったのに、『隣人を知っていますか?おしゃべりをしたり、名前を知っていますか?緊急時に隣人に頼って貰えると思いますか?』と言う質問に緑化したビルではイエスと答えた人がほとんどでした。
他にも警察の記録によれば緑地と社会的崩壊には関係性があることを示しており、コロンビアとペンの研究によるときちんと緑化された場所は発砲事件の割合が9%も下がることが分かっています。
また、自然は精神的にも、肉体的にも長期的な健康改善にも効果があります。
ロンドンでの研究によれば、自然へのつながりで得られるビタミンNが人間の健康と幸福に不可欠な要素であることを示しています。これらの調査結果は都市計画に疑問を投げかけています。
自然とのつながりで得られる変化
1.今日から始められること
窓から自然を見ることでも細胞レベルで脳と体が変化します。”交感神経から副交感神経に活動が代わり、同窓生本能から友好的モードになります。これは非常に体系的な生理学的影響を人間に及ぼし、長期的な健康が得られるでしょう。”とKuoは言います。一日に数回コンピューターから目を離し、5分間でも木々を見つめる。スマートフォンを見つめるのではなく、食事中に空を見上げる。この小さな積み重ねで数日過ごしてみるととても良い変化が起こるでしょう。
2.努力目標
研究では自然保護区に3日間滞在すると抗がん細胞が50%増殖することが分かりました。更に驚くべきことに1カ月経っても参加者はがん細胞と戦うことで知られている「ナチュラルキラー細胞」のレベルがベースラインより25%高かったのです。憧れだった国立公園へ行く時間をつくってみませんか?きっと目に見える体の変化が得られるでしょう。
自然とのつながり。これは私たち人間にとってより穏やかで、健康で、攻撃的でなくなるのに役立ちます。あなたのやり方で自然と向き合ってみませんか。
注)このコラムは許可を得て、Six Seconds社コラムを意訳しています。本文はこちらからご覧ください。