感情と記憶の密接な関係

主に記憶を司る脳は、大脳辺縁系の中でも「海馬(かいば)」と呼ばれる部位(領域)です。海馬が活性化することで、「ドーパミン」と呼ばれる神経伝達物質が放出され、情報は脳に記憶されます。この「ドーパミン」は、他者に褒められたり、他者に認められた時に生じる感情(例:嬉しい、誇らしいなど)や前向きな行動を起こす感情(例:わくわく、どきどき、楽しいなど)でもあります。
つまり、嬉しい、誇らしい、わくわく、どきどき、楽しいといったポジティブな感情が生じることによって「ドーパミン」が放出され記憶力が高まるのです。

子どもは「ドーパミン」が多く分泌されているために、好奇心旺盛(いつもわくわく、どきどきしている)で多くを記憶(学習)しています。何かが出来るようになる度に周囲の大人から褒められ、さらに「ドーパミン」を分泌するので、どんどん上達していきます。
しかし、歳を重ねるごとに「ドーパミン」の分泌は減る傾向にあり、褒められることも減り、更に「ドーパミン」の分泌は減っていきます。使わない記憶が失われていくのと同様に、私たちの脳は使わない機能は退化して行きます。「ドーパミン」も分泌が減れば、その機能は次第に退化し、記憶力は衰えて行きます。やがて記憶に著しい障害が生じる可能性が高まります。
大人は「ドーパミン」が分泌されるような嬉しい、誇らしい、わくわく、どきどき、楽しいといった感情が生じる経験を意図的につくる必要があり、そうした経験を多くしている人ほど新しいことを覚えることができ、前向きな行動を起こすことが出来るため、いくつになっても新しい仕事をおぼえられるし、時代の変化にも対応していきます。
日本の多くの企業では、無駄を省き、KPI(=Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の名のもとに数字目標を設定し従業員にそれを死守するように迫ります。例えば「10億以上売り上げろ」とか「10%コストカットしろ」のように。これではプレッシャーやストレスを感じるだけで、わくわく、どきどき、楽しみはありません。これでは、記憶力も行動力も減退するため生産性は低くなる一方です。
企業や経営者はこんなことをのぞんでいるのでしょうか。

現在では60歳定年後の方のシニア雇用、70歳再雇用もありますが時代に合わない技術しか持たず新しい仕事を覚えられない社員を雇うほど企業の余力はないはずです。

想像してみてください。
新しいことに次々とチャレンジし、わくわくする仕事を周囲から認められながらしてきて定年を迎えた人と、言われた仕事を言われるがまま覚えそのことについてだけ高いスキルを有して定年を迎えた人とではどちらを再雇用しますか。多くの場合は前者を選ぶでしょう。

これからは「わくわく、どきどき」や「褒める、認める」と言った「ドーパミン経営術」が必要になるかもしれません。

シックスセカンズジャパン アドバンスドEQファシリテーター
データ分析センターフェロー
三森 朋宏